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「……お前がいつ苦労したんだよ。ロクに親らしいこともしてないだろうが。家のことは俺がやってたし、俺は金だって稼いでた。その金だって抜いてたくせに」
「あぁ、変態に体売ってたお金のこと? 当たり前でしょ。誰が客見つけてやってたと思ってんのよ。ぜんぶ自分の力でやってたと思ったら大間違いよ」
「……え?」
口を挟んではいけないと思って黙っていたけれど、おばさんの話に思わず声が出てしまった。
「おい! きいちゃんの前でそんな話すんじゃねえよ!」
紫雨ちゃんの怒鳴り声が遠くに聞こえるほど、あたしは混乱していた。
「ふーん。きいなちゃん、知らないんだ。紫雨が体売ってたこと」
「よせ! 止めろ!」
あたしに向かって話すのを紫雨ちゃんが必死で止めようと、二人は揉み合いになっていた。それでも、おばさんは黙らなかった。
「小学生のとき、変な噂が出て、私が男連れ込んでるんだろってPTAから苦情言われたけど、あれ私じゃないからね。黙って私のせいってことにしてあげたけど」
「はあ? そもそもお前がやらせてたようなもんだろうが。あのとき、俺が学校にチクってたら、お前も逮捕されてたからな。黙ってやってたのは、寧ろ俺の方だろうが」
「人聞き悪いこと言うんじゃないよ! お金もらって、喜んでたくせに」
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