エデン

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 慌ててあたしを抱き起した紫雨ちゃんは、驚きながらも笑いをこらえ、複雑な顔をしていた。  二人で冷たい砂の上に座る。 「なんでだよ。普通、転ぶ前に手つくだろ」 「だって、手伸ばして走ってたんだもん。うぇ、最悪。砂食べちゃった」 「顔、砂だらけじゃん」 「やだぁ、見ないでー!」  ポケットからハンカチを出し、顔の砂を払った。涙や鼻水のせいで、砂が顔に張り付いてしまっている。  紫雨ちゃんは遠慮なく豪快に笑っていた。 「きいちゃんってよく転ぶんだな。一年も経ってないのに、もう二回も見てるよ」 「瞬発力ないし、どんくさいんだよ。かわいいでしょ?」 「うん。かわいい」 「ええっ!」  思っていた反応と違い過ぎて、マスオさんみたいな声が出た。 「きいちゃんは、かわいいし面白い。お陰で、ムカムカしてたのも忘れたよ」 「そうなの? それはよかった」 「ほら、貸してみ。まだいっぱいついてるから」  紫雨ちゃんが砂を払ってくれるようなので、ハンカチを渡して目を閉じた。 「ごめんな、きいちゃん」 「急にどうしたの?」  顔をハンカチで払われていて目は開けられないので、代わりに首を傾げた。 「きいちゃんに『初めての相手は紫雨ちゃんがいい』って言われたとき、ちゃんと自分の過去を話して、何が何でも断るつもりだったのに、結局言えなくて」
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