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「えっと、四日後、かな」
「四日後? もうすぐじゃん」
「そうみたいだね」
「そうみたいだねって、そんな他人事みたいに! あたしに挨拶もなしで行っちゃうつもりだったの?」
「まあ、そのつもりだった」
「もう! なんでよー。冷たいなぁ。幼なじみなんだから、挨拶ぐらいしてくれたっていいでしょ」
頬を膨らませて怒ったことをアピールするも、紫雨ちゃんは平然としていた。
「就職して地元離れるってだけだし、大袈裟に別れの挨拶なんかしなくてもいいかなって思って。今生の別れでもないんだし」
「それはそうだけどさー。ちなみにどこに行くの?」
「西の方、とだけ言っておくよ」
「いや、西のどこよ! 範囲広すぎでしょ。押しかけたりしないから教えてよー」
しつこく問い詰めたけど、結局紫雨ちゃんは口を割らなかった。
「落ち着いたら、ちゃんと連絡するから」
と言われてしまったら、それ以上の追及はできなかった。
口の堅い男め。
「じゃあ、そろそろきいちゃんは帰った方がいいよ。あんまり遅くなると帰り道危ないから」
うどん屋さんを出ると、紫雨ちゃんが言った。
「紫雨ちゃんはまだ帰らないの?」
「うん。さすがに今日はあいつの顔見たらヤバいと思うから、家には帰らない」
「行く当てはあるの?」
泊めてくれるような友達がいれば安心だけど。
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