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「こういうの慣れてるから大丈夫」
慣れるほど家出していたことも、あたしは知らなかった。成人した今ならともかく、未成年ならホテルとかも親の同意がないと泊めてくれないだろうし、一体どうやって夜を凌いでいたのだろう。
「……あたしも一緒にいちゃダメ?」
「ダメに決まってんだろ。きいちゃんには、待ってる人がいるんだから。心配かけちゃダメだよ」
「大丈夫。今日はもともと友達とオールする許可はもらってたし、心配はかけないから」
嘘ではなかった。未亜ちんたちに、オールでカラオケしないって誘われていた。親に訊かないとわかんないって曖昧に返事したけど、両親からOKはもらっていた。
ただ、あたしは歌が得意じゃないからカラオケはそんなに好きじゃないし、オールは疲れるからという薄情な理由で返事を渋っていた。もしかしたら渋ってよかったのかもしれない。
「へえ。おじさんとおばさんは寛大なんだね。ってか、きいちゃんは嘘吐かないから信用されてるのか」
「そう。あたしは “良い子ちゃん” だから」
いつか、紫雨ちゃんに言われたことを皮肉った。
「……せっかく良い子にしてきたのに、親に嘘吐いて俺と朝まで一緒にいたら “良い子ちゃん” じゃなくなるよ」
「どうして? 友達とオールするのは嘘じゃないじゃん」
「それはそうだけど、相手が俺だってバレたら怒られるよ」
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