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「怒られないよ。うちの両親は、昔から紫雨ちゃんのこと気に入ってるもん」
「ガキの頃、おじさんとおばさんには、ほんと世話になったからなぁ。家で飯食う以外にもさ、運動会とか参観とかうちのは来ないから、二人が俺のこと応援してくれたり、見にきてくれたりしてたもんな」
「そうなんだ。参観は知らなかった」
「けど、俺は同情されてるんだと思って、あの頃は二人の厚意を素直に受け取れなかった。絵に描いたような幸せな家族なんて信じられなくて、どうせ長くは続かないって思ったりさ。最低だな、俺」
自分で言って、紫雨ちゃんは苦笑いした。
愛情表現に多少の差はあるとしても、親が子を愛すのは当たり前だと思っていた。でも、世の中には自分の子を愛せない親もいるんだと知った。親の愛を知らない子がいることも――。
関係ない話をしている間に、どうやら朝まで一緒にいられる権利を手に入れたらしい。きいちゃんに漫喫は無理かなどと言いながら、紫雨ちゃんは泊まれるところを探し始めた。
それこそ、カラオケボックスとかいいじゃんってなったけど、近場はどこも満室だった。店舗自体少ないし、今日はどこも地元の高校生でいっぱいなんだろう。
観光地じゃないから近所にそれらしいホテルもなく、途方に暮れた。歩き回っていてもそれなりに寒いので、公園で野宿するのは無理だ。
あたしが一緒にいるせいで、選択肢を狭めてしまったかなと気にし始めたときだった。
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