紫の雨

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「きいちゃん……それ何に使うか知らない感じ?」 「マッサージでしょ? 肩とか首とかの」 「あぁ……」  あからさまにがっかりした声を出された。 「あぁって何? 違うの?」 「家電量販店とかにあるやつはマッサージ用として売ってるけど、ラブホにあるやつは違うよ。それは、エロいことするやつ」 「へえ、こんなのでエロいことできるんだぁ」  春には大学生になるというのに、あたしは本当に知識が乏しい。勉強しておかないと、大学でも笑われるかな。 「前から訊きたかったんだけど、きいちゃんってもしかしてAVも観たことないの?」 「え……。どうしてわかるの?」 「観たことあったら、それが何かわかると思うから」 「そんなにメジャーなんだ、これ。だったら、観てみようかな。ここって、確か観れるんだよね? 何かオススメとかある?」 「ないよ、そんなの。映画じゃあるまいし。俺、風呂入ってくるから、その間に適当に観なよ」  呆れたように言うと、紫雨ちゃんは浴室へ向かおうとした。 「えー! 一人で観るの怖いなぁ」 「何が怖いんだよ。一緒に観る方が怖いだろ」と笑い、あたしの髪の毛をくしゃくしゃにすると、紫雨ちゃんは浴室へ向かった。  意味はよくわからなかった。  一人にされ、ドキドキしながらテレビの前のソファーに座った。テーブルの上には、何やらレストランのメニューのようなパウチが置いてあり、リモコンの説明書かもしれないと手に取った。 『四十八手の解説書』と書かれたファイルだった。
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