紫の雨

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「噓つき!」  お仕置きとばかりに、頬を抓った。 「痛い、痛い。ごめんって」 「素直でよろしい」  謝ったので、頬を抓っていた手で頭を撫でた。 「……いいもんだね、頭撫でられるのも」 「そう? 良い子、良い子」  ふざけて大袈裟に頭を撫でたので、さすがに嫌がるかと思いきや、紫雨ちゃんは意外な反応を示した。 「お母さんってこんな感じなのかな」  母親がいるのに、母性を知らない紫雨ちゃん。  我慢できずに、彼を胸に抱いた。  体中の愛という愛を腕に込めて。 「……金がほしかったんだ」 「え?」 「あいつが親父に捨てられて金に困ってたのもあるけど、変態の相手して金もらったときだけ、あいつの機嫌がよくなるからさ。認めたくないけど、ガキの頃はあいつに褒めてほしかったのかもしれない。えらいね、よく頑張ったねって。こんなことさせてごめんねって。まあ、一回も言われなかったけど」  暗くてはっきりと表情は見えないけれど、紫雨ちゃんは笑っているようだった。  泣いちゃいけないと思えば思うほど、涙を止められない。  おばさんに愛されたくて、小さな紫雨ちゃんは歯を食いしばって辛い日々を耐え抜いていたのか思うと、心が張り裂けそうで言葉にならない。
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