変態

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     *  ばしゃばしゃと自転車で道路の上を泳いでいるみたいだ。あたしに向かって降っているかのような激しい雨に、電動じゃない自転車で立ち向かう。お安いレインコートは鎧にも盾にもならず、この雨が弓ならあたしはとっくに絶命している。  学校を出るとき、頬に雨粒がひとつ当たってからは一瞬だった。大泣きする子どもみたいなどしゃ降りの雨。目くらましされているかのように前が見えない。むき出しの膝下はびしょ濡れ、手も悴んでいる。  学校から家までは自転車で五分ほど。必死で自転車を漕いでいたら、すれ違った車のタイヤが水たまりの水を跳ね上げた。避けることができず、腰から下にその水を浴びた。もう笑うしかない。  あたしが住んでいる町は公園が多く、自然を感じやすいと言われている。高校の近くには有名な干潟もある。海も近い。自然が豊かで住みやすいせいか、団地がやたら多い。高校の周りも団地だらけと言ってもいい。かく言うあたしも、団地の子だ。  高校を選んだ理由は家から近いことと、あたしが入学する年から制服がリニューアルされ、可愛くなったからだ。  大通りから団地の敷地に入り、家まであと少し――気を抜いたつもりもなかったのに、自宅の棟に入る段差でタイヤがスリップしてしまった。
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