腐れ縁

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 やっぱり私は呪われている。これは間違いないと思う。きっと、はるか遠い昔のご先祖さまが、なにかとんでもない悪行三昧をしでかして、どこぞの(なにがし)さんから末代まで祟られるような果てのない怨恨を買ったのだろう。そうでなければ、こんな理不尽がまかり通るはずもない。これを腐れ縁と言わずして、なんと言えよう。もう二度と会うまいと固く心に誓ったのに、こうもいとも容易く、偶然にもばったりと、まるでなにかのルールでもともと決まっていたことのように再会させられてしまっては、私としてもたまったものじゃない。これが運命というものなのであれば、誠に残酷である。よほどに強いつながりなのが、何の因果なのか。いずれにせよ、余計なお世話であり、甚だ迷惑千万である。  なんのことだかさっぱりな読者諸君に簡潔に申し上げておくと私はいま、三度目の人生を謳歌している。いわゆる生まれ変わりである。今世における私はいま、美しく可憐で、滴る汗も眩しい華の女子高生であるが、前世では戦後の復興を誓う老舗料亭の一人娘だった。さらにその前、いわゆる前々世では、見事に玉の輿に乗り、名家のお侍様に嫁いだ元農民の娘であった。なんの手違いなのか皆目見当もつかないが、どの時代の記憶も、ものの見事にはっきりと憶えている。まるでついさっきまでそうであったかのように、その頃のことを色鮮やかに思い出すことができる。  神や仏が本当にいるかは知らないが、きっとなにかのっぴきならない事情が重なったりして、二度ほど私の前世の記憶を消し忘れたのだろう。中古で買ったゲームソフトに前のひとのデータが残っていたなんてこと、よくあることだ。誰にだってミスはつきもの。私は小さいことは気にしない。その程度のことであれば、大目に見よう。
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