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「人を喰らって直接取り込むつもりならそうよね。でも鬼裂が開けば私達が出動することを上位鬼は知っている。今はまだ私達に対抗できる力を持っていないから、表立った動きは取れないんじゃないかしら?」
「邪気を回収するつもりもないのに、なんで鬼裂を開くんっすかねぇ?」
「それは多分、黒い鳥居を設置するためだわ」
「えっ、鳥居?」
雪乃の確信めいた言葉に右京はハッと目を見張った。
「今回たまたま理人が見た中位鬼の一連の行動こそがメイン。下位鬼たちの騒動は私達の目を逸らすためのカムフラージュだったのよ」
「なんのために?」
核心に近づき、倭は逸る心を抑えて雪乃の見解を探る。
「それはまだわからないわ。でもこれだけは間違いないと思う。これまでの鬼裂はランダムに開いたわけじゃなく、なにか鬼たちにとって意味のある場所に意図的に開かれている!」
定範は地図を広げた。
「これまでに鬼裂が開いたのは北千住の老人ホーム、日暮里の私立高校、秋葉原の雑居ビルの屋上となっております」
「ね、すべて東京23区内でしょ? しかもどの現場もそんなに離れていない。元警視庁のサイバー犯罪対策課にいた私の勘では、ここにヒントが隠れている気がするのよね」
雪乃は赤く印のつけられた地図を睨むように眺めた。
外には白々と光が満ちていく。暗闇の中でモノトーンのシルエットを浮かび上がらせていた中庭の木々は朝の光を受け、徐々に色が付き始めていた。
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