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四.
すっかり日も暮れた無人の駅で、僕が乗り込んだ一両編成のローカル鉄道が走り出すまで、その村長と、運転手の若い男が見送ってくれた。
「っていうか……ちゃんと帰ったか見張ってる……?
これは完全に、知ってて隠してる感じだよな」
真っ暗な山中を走り抜ける車内には僕以外、老いた運転手のみ。
彼も見張りかな、などと思いつつも、十五分後に到着した次の駅で降りた。
訝しげに僕を見詰め無言で切符を受け取る運転手に会釈を送り、駅舎を出る。
細い道路の周囲には闇に包まれた大自然の影が広がるのみだったが、満月に近い月明かりのおかげで目が慣れれば問題無いだろう。
「あっちの山から入れば村を通らずに行けそうだったな」
翼の女の、深い憂いをたたえた影のある瞳を思い出しながら、僕は再び足を踏み出した。
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