九.

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九.

「なぜそんなに苦しみながらもあんなやつらの言いなりになってる? 出ようと思えば出られるじゃないか、僕を助けた時みたいに! 逃げたらいいんだ!」 彼女と出会った時よりもさらに非現実的な状況ではあったが、それでもはっきりとわかることがあった。 あいつらは、この村は、彼女に全ての苦しみを押し付けて、自分たちだけ豊かな暮らしをしている。 「これ、が……選ばれた糸巫女の……さだめです……から……村を守る……名誉……」 「違う! こんなことは許されちゃいけない! なんなんだよ、あいつらは! 君は!? 君の人生は!? 君の幸せは!?」 「そんな、もの……これが……私の人生……幸せ……」 息も絶え絶えに女が答える。 が、その時、確かに僕は、異形の姿でのたうつ彼女の両目からこぼれ落ちる(しずく)を見た。 「……僕が、終わらせてやる。 君を、こんなことから解放してみせる」 僕は立ち上がり社の正面扉へと回ると、大きな石を拾い上げ扉に向かって振りかざした。
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