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相談に乗ってほしいということだったが、シズさんは今の生活を不安に思っているが、辞めようとは思っていないらしい。だとしたら、ただ私たちに話していたのはのろけだったと言えよう。私も話を聞くだけでアドバイスはしなかった。
「面白いでしょ。彼ら、シズのことが好きだけど、意外に彼女の意思を尊重しているみたい。まあ、自由にした分の代償は身体で払っているみたいだから、それもどうなのかなとは思うけど」
「面白いですね。こっちの方を漫画にしたいくらいです」
「漫画?」
「ああ、弊社で相談所の魅力を伝えるプロモーション漫画を作ろうということになっていまして。失礼ながら、佐々木さんのことを元に原案を考えていまして」
「私?」
シズさんは彼らのお持ち帰りされてしまったので、帰りは佐々木さんと二人きりだ。駅までの道のりをのんびりと歩いていく。私は、この際なので会社のプロモーション漫画のことを佐々木さんに話すことにした。もしかして、私の案が採用された際にプライバシーの権利を主張されて掲載が中止になったら大変だと思ったからだ。
「ああ、元カレと再会して成婚、っていうのが受けるから、という事ね。確かに、それだけなら、時を経て出会った彼と……という感じだよね。私は別に構わないよ」
佐々木さんからは許可を得ることができた。今日はとても有意義な時間を過ごせた。私たちは駅で解散した。月が夜空にきれいに見えていた。
後日、私は佐々木さんヲもとにした原案を社長に提出した。
「いいんじゃないの。元カレと再会とか、少女漫画みたいな出会いからの結婚とか憧れるわ」
「そうですよね」
「なんだか不満そうな顔だけど、自分で出した案に納得がいかないのかしら?それとも、もっとすごい隠し玉を持っている?」
「いえ、これはプロモーション漫画としては最高に良いと思います。ですが……」
私はおずおずともうひとつの原案を社長に手渡した。それは、居酒屋から帰った後に、睡眠を忘れて書きだした、シズさんの体験談の箇条書きだった。
「すごいことになっているけど、これはいったい……」
「プロモーション漫画にはできないので、私がこれから小説にしようかなと思っています」
もし、これを宣伝に使ったとしたらどうだろうか。彼女自身は幸せそうだが、はたから見たら、男を三人も囲ったみだらな女に見えるだろう。それを可能にした結婚相談所は悪魔とでも呼ばれるかもしれない。
「そういえば、人見さんは趣味で小説を書いていたわね。いいんじゃないの?会社の名前を出さなければ、私は気にしないわ。私もぜひ、小説の形で読んでみたいし。期待しているわ」
私は社長のお墨付きをもらって、シズさんの許可も得て、彼女の体験談を小説にすることにした。
ちなみに私の原案(佐々木さんの成婚談)は無事に漫画の原案に選ばれた。後日、漫画家さんと打合せする予定が入っている。
結婚相談所には出会いがたくさんある。もし、婚活を考えているのなら、ぜひ当店にあなたの婚活をサポートさせて欲しい。もしかしたら、幸せな出会いや再会、悪魔の再会もあるかもしれない。
それは入会してみないとわからない。それに、結婚の形や幸せの形は人それぞれだ。誰にも文句を言われる筋合いはない。
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