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スローライフでお願いします
【スローライフでお願いします】
目が覚めると、あたり一面が白いフワフワ絨毯。
目の前には白いガウンを着た頭の眩しい老人が。
「おお、○○よ。ここは現世とあの世の狭間の世界。本当ならばお前さんは死ぬはずじゃなかったんだが、ちと手違いでの」
「死んだ?手違い?」
ああ、思い出した。
私は22歳。
短大卒業後、あるブラック企業に勤めて2年め。
ブラック上司に散々理不尽なことを言われ、
むしゃくしゃして帰りにやけ食い&ヤケ酒。
ここは友達ともたまに来るショットバー。
お酒は強くないけど、料理がおいしい。
早朝まで営業しているし。
それにマスターが聞き上手で、
いつも私の愚痴をきいてもらう。
あー、すっきり。
気分上々で店を出た。
浮かれてフラフラ家に帰ろうとしたら、
トラックにハネられた。
「フォッフォッフォ」
「もしかして、神様ですか?」
「うーん、神様みたいなもんかの。ただの中間管理職なんじゃが」
「私は死んだんですか?」
「そう言っておる」
ショックでしばらく気が動転した。
どうやら夢でもなんでもないらしい。
私はなんとか気を取り直して、
「天国に行くんですか?」
「いや、天国には行けぬ」
「まさか、地獄?そんな」
「地獄じゃないぞ。かといって元の世界にも戻れぬ。おまえさんは、新しい世界に転生するんじゃ。さもなくば、消滅してしまう」
「え」
そんなこと言われても、私は話についていけない。
転生って。
「申し訳ないからの、おまえさんの希望を聞いておこう。転生にあたって、なにか希望はあるか?転生先とか、スキルとか」
「じゃあ、のんびり暮らしたいです」
「おお、そうか。流行りのスローライフを送りたいとな」
「スローライフっていうか、私の望みは
広い草原に建ってる小さな白い家。
そこに優しい旦那様とかわいい子供と。
ワンちゃんとネコちゃんも。
暖炉もあって、私はそこで編み物をするの」
「うーむ。ポエムじゃの。そのものずばりは難しいのじゃが、境遇は整えてやろう」
「お願いします。人のあまりいないような田舎でのんびりとあくせく動かなくてもすむような暮らしがしたいです」
「うむうむ、謙虚な心の持ち主じゃ。よろしい。サービスで4属性魔法が発現するようにしてやろう」
「いや、そういうのいいんで」
「腕力もあげておこう」
「ちがうって」
「それから、転生先で本を読め。新しいスキルが発現しやすいようにしておこう」
「だから、話を聞けって。のんびり暮らせたらそれでいいんで。変なスキルとか騒ぎの元はいりません」
「転生先は人のあまりいないところを選んでやろう。心配するな」
「のんびりできる?」
「人がおらんところが望みなんじゃろ?じゃが、人生いろいろじゃ。どう転んでいくかはお主次第じゃ」
「えっと、それって何かのフラグ?」
「何を言っておる。未来は誰にもワシでさえ見渡せんと言っただけじゃよ」
「はあ」
「わかったか?ならば、転生するぞ。それ」
私は真っ白な光に包まれ、気が遠くなっていった。
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