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「青竹は、こうして熱すると余分な油が浮き出てくる。この油を拭き取ることで表面に艶が出るし、長持ちするんだ」
「ほう。なるほど」
「コツは、遠火で炙ること。火力が強すぎると割れるからな」
「花宮は、なぜ、ここまで竹の加工方法に詳しいんだ?」
作業をする煌の姿を腕組みして眺めていた第二分隊の隊長が腕を解き、質問を投げかけた。
「昔、うちにいた庭師に聞いたんだ。竹細工が得意なじいさんで、俺にもいろんな玩具を作ってくれたよ」
「竹細工の玩具か。俺もガキの頃に遊んだよ。うちには庭師なんていなかったから、親父の手作りだけどな」
「いいじゃねぇか。うちの親父は不器用な人だったから、代わりに庭師が頑張ってくれてたようなもんだ」
「ちょっと懐かしくなってきた。乾燥が終わった青竹で何か作ってみるか」
「いいな。やろうぜ」
花宮煌は、意外にも手先が器用らしい。駐屯地でさまざまな用途に重宝されている青竹の加工を彼が担っていたとは、今日まで知らなかった。それに、やはり第二分隊長と最も馬が合うようだ。
少し離れた場所から二人の分隊長の会話を聞いていた奏人は、誰にもわからない程度に目を細めた。
同じ軍曹という階級。そして分隊長という責務から共通の話題を持つ者同士が軽口を叩き、笑い合って、ともに作業に勤しむ様子は、心を許せる相手がいない奏人にとって眩しすぎるものだった。
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