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 本当に、本心からの言葉だったのか。  頭髪を掻きむしるのをやめた煌が真剣な目で告げた内容に、一番に出てきた奏人の感想は彼の心を乱した。  好き? 花宮軍曹が、私を? しかし、この者とは、契約の上に成り立つ関係では?  部下からの突然の告白は、とんとん拍子に昇進を続けている優秀な奏人の頭脳をもってしても、思考が追いつかない。 「大尉殿、返事は?」  いや、返事と言われても。 「行かないよな? 帝都の参謀本部より、うちの騎兵連隊のほうがあんたに合ってるよ。ここにいてくれよ」  いや、だから、それは……。 「なんで、何も言ってくれねぇんだよ。あっ、俺の言うことは信じられないとか? もしくは気持ち悪い? 確かに、今まではあんたを脅して、あんなことやこんなことをしてきたけど。でも、気づいちまったんだよ。本気で、あんたに惚れてるって」 「花宮……」  煌の腕が奏人を包んだ。煌が着ている既製の綿シャツと奏人のシルクシャツが擦れて、布地が立てる微かな音が二人に届く。 「今まで、すみませんでした。そもそもの始まりの、あの秋の日、俺はあんたに八つ当たりしたんだ。全てを失った自分と比べて、大いに恵まれてる上級貴族のお坊ちゃんに勝手にむかついて偏見の目で見ていたから、脅せるネタがちょうど手に入ったと、あんな関係に躊躇なく引き摺り込んだ」  煌の腕は、まだ離れない。彼の告白も、まだ終わらない。
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