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「あんたと寝る夜を満月の日に決めていたのも、自慰をしてたあんたを見つけた夜の月だったから。それを忘れさせないため、俺に服従する理由を『恥辱』として刻み込むためだった」  そうだったのか。隷属の契約をしたわりに、煌が強制してくる関係が月に一度なのは、なぜなのか。密かに奏人が抱えてきた疑問が、今、解けた。 「俺は本当に最低なやつだ。今更な謝罪だと思う。けど、こうして自分の気持ちをなぞってみると、たった一つの想いに行き着く。大尉殿だから、あんただったから、何度も抱けた。男を抱く行為にのめり込めたと思えるんだ。これが事実で真実だ。どうか、これだけは信じてほしい」 「信じる」 「え?」 「信じる、と言った」 「いや、それは聞こえたけれども。そうじゃなくて! そんなに簡単に即答していいのかってことで! 会話の相手は、俺だぞ?」 「おかしなことを言う。信じてほしいと言ったのは、お前だろうに」  信じて、と迫ってきた当人が、奏人の即答に戸惑っている顔を見せてくる。  さて、どうするか。 「では、今度は私の言葉を聞いてもらおうか」  数瞬で最適解を導き出した奏人が口を開いた。 「実はな、花宮軍曹。昨年の秋、お前に自慰の現場を見られたのは偶然でも失態でもない。私があの場で行為に及んでいたのは、お前が見回りをするコースと知っていたからだ」 「……は?」 「私は、お前と接点を持ちたかった。その願望を叶えるためには男の欲を刺激することが最も手っ取り早いと結論が出たから、身体を張ることにした」 「……は?」 「勝率の低い賭けだったが、お前のほうから私と関係を持ちたいと申し出てくれたことは幸いだったよ」 「……は?」
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