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「ところで、花宮」
「何でしょう」
呼び名が変わったことで、煌は表情を引き締めた。
「先ほど少し聞かせたが、騎兵連隊の新たな任務についてだ。詳しい作戦案は明日の会議で通達するが、今度は騎兵連隊の九割を投入する規模の出兵になる予定だ」
「はっ。了解であります」
二人がいるのは、変わらずに寝台の上なので、第三者がもしもこの状態を見たならば、目を剥くか、激しく吹き出しただろう。
新規の任務について神妙な顔で話している二人ともが一糸纏わぬ姿で、部下は上官を腕枕している、甘ーい密着体勢なのだから。
まぁ、大尉殿のこういうところも堪らないんだよ。
自分たちを客観的に見て微妙な心地になっていた煌だったが、依然、真面目な顔を崩さない奏人がとにかく可愛いから、柔らかな濃茶色の髪を優しく撫でることに専念するのだ。
「頼んだぞ、第一分隊長」
「お任せを。どんな過酷な戦況になっても、あんたは俺が守る」
「いや、私が指揮官として、お前たちを守るんだが」
「そこは、おとなしく俺に守られとけよー。全く、上級貴族のお坊ちゃんは融通が利かないな! そういうところが可愛いから、べた惚れしてんだけどな!」
一年の歳月をかけ、ようやく想いを通わせるに至った煌と奏人。笑みを交わし合う二人が見据えるのは、ともに寄り添い続けることを誓った未来だ。
しかし、そこに禍々しい足音がゆっくりと響き始めていることに、恋人たちは気づかない。
彼らを待つのは、動乱と狂乱の新時代。
【了】
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