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 怜悧さが前面に出た整った顔立ちからは、煌がぶつけた嘲りに対する反論の感情は窺えない。ただ、てらりと濡れた唇が先程までの口淫の名残を思わせ、色めいているのみ。 「いやいや、大差ありすぎだろ。そういうとこが変わってるっつってんだ。特権階級が集まるパーティーで食う料理と、精液の味を一緒くたに片づけねぇぞ。普通はな……ほら、苦いじゃないか」  ほら、と相手に唇を寄せた煌が大きく顔をしかめる。自らが放った精の味をわざわざ舐めて確認したわけだが、その理由が、目前の男の濡れた唇と色気にふらふらと誘われたからだとは思い至らない。 「まぁ、いい。続き、しようぜ。来いよ。大尉殿?」  来い、と煌が誘っているのも、彼の寝台ではない。辺境の駐屯地で最も広い私室を使うことを許される身分ではないのだ。  煌の階級は軍曹。この部屋の持ち主は、煌が手を引いている相手、土岐奏人(ときかなと)大尉だ。 「先に脱げよ。大尉殿。その後、俺を脱がすことを許してもいい」  陸軍大尉であり、辺境騎兵連隊の隊長でもある奏人に、なぜ、煌が命じる側に立てているのか。なぜ、階級も身分も遥か格下の煌に性奴隷のように奉仕することを奏人が良しとしているのか。  そのきっかけは、半年前の満月の夜に遡る。
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