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相変わらず、ちまちまとした嫌がらせは続いていた。
けれどどれも些末なもので、私は全く動じない。
これからも九条愛子は女優として活躍するだろうが、見ている人は見ている。あの女の本質に気づいていて、放っておいても自滅していくはずだ。
私が手を下さなくとも、いつか必ず…。
「もう、やめませんか?」
「はぁー?」
「下らない復讐を、私はやめるわ」
「意味が分からないんだけど?」
「あなたのことを許すことにしたの」
「なんで私があんたに許されなくちゃいけないの?何か悪いことしたかしら?」
しらばっくれる愛子を、心から気の毒だと思った。
「あなたは可哀想な人ね?」
「…私が、可哀想?この私が?」
「そうよ、何も気づいてないから。自分がやったことは必ず自分に戻ってくる。良いことも悪いことも、必ず返ってくるのよ」
だからこのまま愛子に復讐をしたら、それもまたうつか自分に返ってくる。
「いい気になるのも今のうちだけよ。あんたなんか、すぐに落ちぶれるんだから」
「あなたの言う通りかもね」
「えっ?」
「女優なんて、すぐに新しい才能が出てくるし。でも、私は他で幸せを手に入れたから」
「…幸せ?」
愛子の顔が瞬時に険しくなる。
私の言う幸せに、心当たりがあるからだ。
「そう、あなたが絶対に手にすることができない幸せよ」
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