653人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたさえいなければ、こんなことにはならなかったのに!あんたが死ねば良かったのよ!なんで、なんで涼真がっ…」
おいおいと泣き崩れる私は、この時は役に入り込んでいた。
大切なものを奪われたヒロインが、大切なものを奪った相手を叩きのめす。
そこには、自分が犯した罪など微塵もない。
「どう責任を取るつもり?」
「それは…」
「このまま目を覚まさなかったら、どう責任を取るつもりなの!?」
「わ、私がずっと付き添って──」
「やめて!今度は殺すつもり?」
見下ろしながら吐き捨てると、彩乃の顔が大きく歪む。
「だってそうでしょ?あんたが言い寄ったから、涼真は大怪我をした。松永涼真なのよ?世界に誇る俳優の役者生命を、あなたが断ち切ったの。その自覚ある?ないと言わせない。あんたが家政婦の振りをして近づきさえしなかったら、こんなひどいことにはならなかった!」
いつもなら歯向かってきた生意気な女も、さすがに
何も言い返せないらしい。
それなら、トドメをさしてやる。
「あんたは人殺しよ。でも、涼真のために一つだけできることがあるわ」
「──えっ?」と顔を上げた彩乃が、縋るような表情をしていた。
「死んで。それができないなら、二度と近づかないことね」
フフフっ。
これで涼真は私のもの。
最初のコメントを投稿しよう!