【どうか起きないで】

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気分がいい。 周りから称賛され、世間からは崇められる。 意識が戻らなくなって半月で、九条愛子は再び頂点に返り咲こうとしていた。 ここのところ、パッタリとAYANOを見ていない。 事故のショックで塞ぎ込んでいるのか、撮影もストップしているという。 「馬鹿な女」 こういう時にこそ、女優は泣くものだ。 すっかりメディアの露出がなくなった彩乃は、女優失格。 まぁ、あれこれ頑張っていたようだが、結局はそのレベルということ。 この事故で、私たちの明暗がくっきり分かれた。 「これも全て、あなたのお陰よ」 規則正しく呼吸をしている涼真に、小さく声をかける。 囁くように、小さく小さく。 だって、目を覚ましたら厄介でしょ? 「あなたも悪いのよ。この私を捨てようとするから、罰が当たったの。私は九条愛子よ?みんな私と一緒になりたがってるんだから。でも、こうなったっていうことは、あなたも本当は私が良かったなよね?あんな女と一緒になるのが嫌だったから、私に助けて欲しかったんでしょ?」 ふと、閃くものがあった。 「そうよ、私は助けてあげたのよ。あんな女とくっついて不幸になるのが目に見えていたから、救ってあげたの」 心から微笑みながら、涼真の耳元で告げる。 「これであなたは、私のものよ」 と。
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