653人が本棚に入れています
本棚に追加
気分がいい。
周りから称賛され、世間からは崇められる。
意識が戻らなくなって半月で、九条愛子は再び頂点に返り咲こうとしていた。
ここのところ、パッタリとAYANOを見ていない。
事故のショックで塞ぎ込んでいるのか、撮影もストップしているという。
「馬鹿な女」
こういう時にこそ、女優は泣くものだ。
すっかりメディアの露出がなくなった彩乃は、女優失格。
まぁ、あれこれ頑張っていたようだが、結局はそのレベルということ。
この事故で、私たちの明暗がくっきり分かれた。
「これも全て、あなたのお陰よ」
規則正しく呼吸をしている涼真に、小さく声をかける。
囁くように、小さく小さく。
だって、目を覚ましたら厄介でしょ?
「あなたも悪いのよ。この私を捨てようとするから、罰が当たったの。私は九条愛子よ?みんな私と一緒になりたがってるんだから。でも、こうなったっていうことは、あなたも本当は私が良かったなよね?あんな女と一緒になるのが嫌だったから、私に助けて欲しかったんでしょ?」
ふと、閃くものがあった。
「そうよ、私は助けてあげたのよ。あんな女とくっついて不幸になるのが目に見えていたから、救ってあげたの」
心から微笑みながら、涼真の耳元で告げる。
「これであなたは、私のものよ」
と。
最初のコメントを投稿しよう!