【どうか起きないで】

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コメントが溢れ返っていた。 涼真の姿を映したドキュメンタリーの反響は凄まじく、狙い通り九条愛子の株は爆上がりだ。 こうして意識が戻らない以上、私は安泰だと言える。 だからどうか──。 「二度と目を覚まさないでね」 私が涼真に掛ける言葉は、これだけだ。 下手に声掛けをして、意識が戻るようなことになったら堪らない。 最愛の恋人に尽くす姿は見せかけのものであり、本当はこのまま眠り続けることを望んでいるのだから…。 私を捨てた罰として、九条愛子を引き立てる養分となるのよ。 もう、私を邪魔だてするものは居ないのだから──? 「何の用?」 勝手に病室に入ってきた彩乃の顔は、怒りに満ちている。 「私、言ったわよね?二度と顔を見せるなって。もう忘れたの?この人がこんな風になったのは、あなたのせいなのよ?あなたさえ彼に近づかなければ──」 「それでも後悔はしてないわ」 「なに?」 「出会えたことを、私は後悔していない」 「自分のせいでこうなったのに?こんな目に遭わせたのに、なにを開き直ってるのよ?少しでも良心ていうものがあるなら、今すぐ出て行きなさい!」 「出て行かない。良心があるから、あなたのいいようにはさせない」 「何を訳の分からないことを」 「あなたは、彼を利用してる」
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