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「もし意識が戻れば、彼はあなたから離れていく」
自分の言葉が正解だと疑いもしない、自己中な女。
ここへきてもまだ、自分が上だとマウントを取るのか?
涼真の気持ちを勝ち取ったから、そんなに上から目線なのか?
「あなたが何をしようが、いずれは終わる。でもその時にはもう、取り返しがつかないことになるわ。それなら今、おとなしく退いたらどう?こんなことをしていても、自分が惨めになるだけよ」
「私が…惨め?」
「自分でも心のどこかで思ってるはず。どれだけ足掻いたって、人の気持ちは変わらない、変えられない。いつかまた捨てられてしまう。目を覚ましたら終わりだって、ずっと怯えながら生きていくの?」
「それは…」
心の中を見透かされているようで、不快だった。
でももう、九条愛子には涼真が…眠っている松永涼真が必要なんだ。
医者の話じゃ、意識が戻る可能性は低いという。
このまま目を覚まさなければ、真実にはならない。
私が振られたことも、彩乃に告白したことも、なにもかもに蓋をすることができる。だって私と涼真は、公然の仲なのだから…。
彩乃がどれだけ喚いても、世間は私の味方だ。
これまで培ってきた実績が違う、キャリアも信用度も全てにおいて私のほうが上。
こんな女、案ずることもない。
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