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「フン、笑わせるんじゃないわよ」
私は、天下の九条愛子だ。
「誰がなんと言おうと、私が涼真のパートナーなの。あんたなんか出る幕じゃないのよ。告白された?そんな戯言、世間様が信じるとでも思う?」
「でもっ」
「信じると思うかって聞いてるの!?ずっと私が看病してきたんだから、今さらあんたが割って入ってこれるわけないでしょ?ほら、分かったなら出て行きなさい」
腕を掴んで引っ張るも、彩乃はその場に踏ん張る。
「嫌よ、出て行かないわ!」
「どうやら追い出されたいようね。いいわ、警備員を呼んであげる。しつこく付きまとうストーカーだって、世間に知れ渡ればいいわ!夫婦揃って犯罪者ということにしてあげる!」
廊下に出て「誰か来て!不審者よ!」と声を張り上げた。
「あなたが出て行きなさいよ!」
逆に病室から押し出されたが、閉まりかけた扉に体を挟む。
「誰かっ、助けて!」
駆けつけた看護師たちとともに中になだれ込み、涼真に縋っている彩乃を引き剥がす。
「お願い、目を覚まして!お願いだからっ!」
「やめなさいよ!早く追い出して!」
「松永さんっ!」
看護師たちに引き離されていく彩乃が、涼真に向かって手を伸ばす。
こうなったら病院が分からないように転院して、あの女が二度と近づけないように…。
「──ここは?」
「…えっ?」
声のしたほうを、呆然と見つめる。
そんな、嘘でしょ?
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