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「しっかりして、私がついてるから!」
それは私が言うセリフなのに、運ばれていく松永に付き添うのは愛子だった。
明らかに、私を庇って負傷したんだ。
そのことがショックとなり、歩くこともままならない。
結局は松永と引き離されて、ようやく自分の足で立ち上がった時には──。
「あんたのせいよっ!」
愛子に頬を打たれた。
撮影では何度叩かれても屁でもなかったのに、1発で沈み込む。
「あんたさえいなければ、こんなことにはならなかったのに!あんたが死ねば良かったのよ!なんで、なんで涼真がっ…」
おいおいと泣き崩れる愛子を、嘘泣きだと疑う気力もなかった。
放たれる言葉の一字一句が、私の体を突き刺す。
私のせいだ。
私さえ、松永に近づかなければ…。
こんな恐ろしいことは起きなかったはず。
もし、もしこのまま命を落とすようなことになったら、どう責任を取ればいい?
私は、どうしたらいいの?
絶望的な問いかけを答えてくれたのは、愛子だった。
「あんたは人殺しよ。でも、涼真のために一つだけできることがあるわ」
「──えっ?」
「死んで。それができないなら、二度と近づかないことね」
これが、私にできる唯一のこと?
それしか、許されないの?
償うことさえ、いけないの?
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