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「おじさん、病気なの?」
「どうしてそれを…?」
「おばあちゃん達が話してた。怪我したの?」
「そう、でもすぐに元気になるから大丈夫よ」
まだ小さい息子にも心配させていることを情けなく思う。
松永は私を助けてくれた。
あのままだったら…こうして光輝のことを抱きしめることもできなかったはず。だからこそ、目を覚まして欲しい。彼のために何か出来ることがあれば…。
「何度来ても同じよ、会わせるわけにはいかない」
「せめて、ひと目だけでも顔を…」
「あなたのせいで病状が悪化したら、どう責任を取るつもり?」
仁王立ちの愛子が、我が物顔で立ち塞がる。
ここでは私は部外者、無理に押し入っても追い出されるだろう。
騒ぎになってしまえば愛子の言う通り、松永に悪影響を及ぼすかもしれない。
「私が付き添ってるから、心配しなくていいわ」
「でも…」
「もし目を覚ましたら、あなたにも連絡するから」
今はこの言葉を、信じるしかないのか。
確かに愛子は仕事をせずに、つきっきりで看病に専念している。
松永の意識が戻るように願う思いは、同じなんだ──。
「毎朝、必ずおはようと声を掛けています。声は届いているから、彼の映画を流したり、いろんな思い出話をしたり」
眠っている松永をカメラが捉えた映像を、唖然と見ているしかなかった。
なんだこれは?
なんで松永が映っている?
どうしてこの女は微笑んでいるの?
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