0人が本棚に入れています
本棚に追加
(早く終わんないかな)
心の中で呟きながら、ちょっと落ち着かない気分でそわそわしていた。
なんせ今日は大好きな漫画の新刊発売日だ。それを目的に、今日という日を生きていると言っても過言じゃない。
帰りの支度を終えた鞄から視線だけを前に向け、前髪の隙間から様子をうかがう。
黒板の前で話をしていた担任の先生が、ちょうど話し終えるところで、教室の生徒の一人が号令をかける。
帰りの挨拶が終わると同時に、僕は足早に教室を出た。
向かうのは僕がバイトしているアニメショップで、今日は漫画を買うついでにバイトしちゃおうという魂胆だ。
僕は迷いなく学校の門を出て左に曲がる。
「私と付き合ってください!」
ふと後ろから声が聞こえ、うつむき加減のままそっと後ろを振り返ると、女の子の後ろ姿とその向こう側に、背の高い男の子が立っていた。
「君の気持ちには応えられない、ごめん」
(なんという場面に出くわしちゃったんだろう、、なんか、、漫画みたいだ!)
なんとなく噂では聞いていた。
あの告白されていた男の子は確か黒田くんという名前で、僕のひとつ下の二年生だ。180㎝以上の高身長にシャープで整った顔、黒髪が似合うクールな彼は、まさに少女漫画に出てくる男の子そのものだ。
しょっちゅう告られているとは聞いていたが、現場を見たのは初めてだ。
漫画のようなシーンに少し心を躍らせていると、黒田くんの視線が女の子から外れ、こちらに向いた。
咄嗟に僕は顔を前に向きなおし、早足でその場を離れて目的地のバイト先へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!