第二話 狼煙

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「俺から直接説明させてください。そしてあいつに、自分でどうするか決めさせたい」  流星がもし今までの通りの生活を続けたいと願ったら――俺は、この二人を裏切ってでも、流星を守り通す。二十年前のあの日、心に誓ったのだから。 「だが、組に関わらずに生きるなんつう呑気なことが、今後できるとは思わんことだな。俺は伊玖磨を跡目にしねえためってんなら、どんな汚い手でも使うぞ」  杉内さんは俺を睨めつけ「明日、遅くとも明後日には話を聞かせろ」とそう言い放つと部屋を出て行った。その後に藤本さんが続く。その背中に恨み言の一つでも言いたかった。が、伊玖磨を跡目にとあの父子が動くことが予想できていたはずなのに、口を塞ぐだけの地固めをできていなかった俺に最も非がある。配下組織以外のところまで手を回せていなかった。それこそ俺の資質が問われるところだ。  家を出て道路に停まっていた黒塗りの車に乗り込む。 「流星の家に行ってくれ」  車の窓枠に肘をつく。その手の指先がわずかに震えていて、動揺を隠すようにその指で前髪を掻き上げた。 「兄貴、何があったんすか」  俺の様子が明らかに可笑しかったのだろう。賢太が顔を強張らせて声を掛けた。 「……流星の存在が知られた」  その答えに賢太も顔を青くし、いつもよりもスピードを出して車は明るいうちに進むことは珍しい道を走り出した。
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