食べてしまいたいほど、きみが好き8

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食べてしまいたいほど、きみが好き8

「ひぁ!」  深いところを貫かれて悲鳴が漏れた。雄を柔らかく包み込むところを抜け、狭いところをクポッと抜けた先をトントンと小突かれる。そこに熱い塊を感じるのは久しぶりのはずなのに、気持ちがよくて腰がせり上がった。 「そんなに押しつけなくても、抜いたりしないって」 「ちが、から……っ」 「嘘ばっかり。尻の下に枕入れなくてもいいくらい、腰浮き上がってる」  腰を支えながら、尾てい骨あたりを指でさわさわと撫でる感触にゾクンと震えた。逞しく動くガルに押しつけるように、爪先立ちになった両足に力が入ってますます尻が上がる。 「ほんと、アールンは可愛い」 「ガル、」 「可愛くてガバガバで、優しくて強い」 「ガル、もぅ、奥は駄目、だから」  駄目だと言ったのに、ガツンと音がしそうな勢いで奥にねじ込まれた。目の奥がチカチカしてガルの顔がよく見えない。一瞬詰まった息が「けほ」と出て顎が上がる。 「もう何も出ないな。ってことは、尻だけでイッてるってことか」  ガルが笑っている。目を閉じているから顔は見えないけど声は楽しそうだ。 「なんか俺だけのって感じで興奮してきた」 「んっ!」  耳元でそんなことを囁かれて首が粟立った。  夕暮れ前からベッドになだれ込んでどのくらい経っただろう。ぐちゃぐちゃになったところで貫かれてから、ガルはほとんど僕の中に入りっぱなしだ。ガルが二度僕の中に出したのはわかったけど、僕自身が何度イッたのかはわからない。途中からは何も出さずに後ろの感触だけでビクビク震えている。 「やっぱり、いい匂いがする」  クンクンと首の辺りを嗅ぐ気配がした。熱い吐息が舐めるように肌の上を移動し耳たぶをぺろりと舐められる。そのままカリッと噛まれてビクッと震えた。それに喉の奥で笑ったガルが、顎を舐めて最後にのど仏をべろりと舐め上げる。 「肩の痣、だいぶ薄くなってる。……チッ」 「……ガル……?」  舌打ちなんて珍しい。どうしたのだろうと思ってゆっくりと瞼を開いた。 (そういえば、今日は満月だったっけ)  月明かりに照らされたエバーグリーンの眼がキラキラ光っている。思わず見惚れていると、中を押し広げていたガルの雄が少し大きくなった気がした。さすがに苦しくて「はふ」と息を吐くと、ガルが「ごめん」と声を漏らす。 「ガル?」 「興奮しすぎて……ちょっとまずいかもしれない」  眉を寄せたガルの髪がふわっと広がった。気のせいでなければ少しずつ伸びている気がする。 「ガル、どうし……っ」  不意に肩に痛みが走って言葉が詰まった。慌てて視線を向けると、やけに太い指が僕の肩をがっしり掴んでいる。普段のガルの指とはまったく違う太さで、しかも人のものとは思えないほど爪が鋭く尖っていた。 「ごめん」 「え、」  聞き返す前に左肩にがぶりと噛みつかれた。「ひぃっ!」と大きな悲鳴を上げてしまったのは、これまでよりずっと強く噛まれたからだ。噛まれている感触もいつもと違うような気がする。 (これって、もしかしなくても牙なんじゃ)  ズクッと鋭い痛みが走った。間違いない、これは牙の痛みだ。小さい頃に一度だけ大蛇に噛まれたことがあるけど、そのときとよく似ている。でも、ガルにはそんな牙はなかった。何度も噛まれてきたけどこんなふうに感じたこともない。それなのに信じられないくらいの痛みを肩に感じる。  そんなことを考えている間もズクズクとした痛みが肩に広がっていった。ますます強く噛みつく力に連動しているのか、僕を貫く雄が一気に膨れ上がった。そのせいでさらに深いところに切っ先が入り込みそうになる。 「ガル、待って、奥は、駄目って……ぁあっ!」  唸るような声が肩付近から聞こえ、鋭く深い痛みが走った。肩にはとんでもない痛みを感じているのに、貫かれているお腹の奥は信じられないほどの快感が広がっている。 「あ……ぁ、あ……」  小刻みに震える体を無視するように、狭いところをぐりぐりと押し広げられた。そうされたら僕に抵抗することはできない。ビクンビクンと体を跳ね上げながらも必死に受け入れ続ける。  まるで打ち上げられた魚のように跳ねる僕を押さえつけたガルが、さらに強く肩に噛みついた。そうしてもっと狭いところに雄をねじ込もうと腰を押しつける。 「……あ・ぁ――!」  目の前に火花が散った。頭も弾け飛んで薄く開いた目尻から涙がこぼれ落ちた。久しぶりに暴かれた深い場所でドクドクと脈打っているのはガルの雄だ。 「はぁ、はぁ、は、はぁ、はぁ」  気がついたら顎を上げて荒い息を吐き出していた。自分のお腹が濡れているような気がするのは盛大に吹き出したからに違いない。しかも、これは種じゃない。ぬるぬるというよりびちょびちょといった感触に下腹が小さく震える。 「ごめん」  ガルの声に少しだけ顎を引く。僕を貫いたまま上半身を起こしたガルの髪の毛は、短髪とは言いがたい長さになっていた。まるで整えられていない姿は粗野にしか見えないのにガルによく似合っている。  それよりも目立つのが真っ赤に染まった口元だった。ベロリと唇を舐める舌と、端のほうに尖ったものがちらりと覗く。 「今夜が満月だって忘れてた。興奮しすぎて、ちょっと抑えられなくなって……肩、痛かっただろ」 「んっ」  噛まれたところをベロリと舐められて痛みが走った。痺れてうまく動かせないということは相当な力で噛まれていたということだろう。 「ごめん。……やっぱり怖いよな」  ガルの寂しそうな声に、ゆっくりと頭を振った。右手を伸ばして、濡れているガルの口元を拭ってやる。 「怖くなんかない。それを言うなら、人狼のガルだって、足枷(グレイプニール)の魔女が怖い、はずだろ?」 「怖いわけない」 「僕も、同じだよ」  掠れた声で途切れ途切れにそう言って微笑むと、ガルが口元を拭っていた僕の指を噛んだ。甘噛みなのかゾクッとして気持ちがいい。 「興奮するとどうしても噛みたくなるんだ。満月だと狼に戻りかけることもある。とくに今回は久しぶりだったから抑えられなかった」 「それって、もしかして僕を、食べたくなるって、こと?」 「そうじゃないけど……よくわからない。たぶん人狼の本能だと思う」 「そっか」  ふと、ガルに食べられたらどうなるんだろうと考えた。狼のガルになら、あっという間に全部食べ尽くされそうな気がする。  それもいいかもしれない、なんて思ってしまった。食べられてしまえばガルとずっと一緒にいられる。 (って、何を考えてるんだか)  でも、食べられてもいいと思うくらい僕はガルが好きなんだ。何もかもが混じり合って一つに溶け合いたいほどガルのことが好きでたまらない。 「好きだよ、ガル」 「……急にどうしたんだよ」  珍しくガルが照れている。唇を撫でていた右手をガルの首に回し、引き寄せるように抱きしめた。左肩はまだ痛いけど、こうして密着しているとホッとする。 (僕も噛んでみたい)  不意にそう思った。ゆっくりと口を開き、すぐそばにあるガルの肩にかぷりと噛みつく。途端に中に入ったままだったガルの雄がビクビクッと震えるのを感じた。落ち着いていたのが嘘のように一気に奥を小突かれて「んっ」と声が漏れる。 「アールン、そういうことすると自分の首を絞めることになるって知っておいたほうがいいよ」 「んっ、もう、奥は、無理だから」 「聞かない。煽ったアールンが悪い」 「ガル、」 「夜通し確かめ合うっていうのも、いいかもな」  そう言って僕をきつく抱きしめたガルが、ゆるゆると腰を動かし始めた。それだけでお腹の奥が痺れたようになり、きゅうっと雄を締めつけてしまう。 「やっぱり、アールンは可愛い」  さっきよりも膨らんだ雄を、もう一度狭いところにねじ込まれる。息が苦しくなりながらもガルの首に回した右手で必死に抱きついた。興奮しているからか左肩の痛みも段々わからなくなる。 「ガル、ガルっ」  眼がチカチカしてきた。逞しい腰に両足を絡みつけ、それでも快感に堪えられそうになくて目の前の肩に噛みついた。 「噛みつかれると、アールンだけの雄になった感じがして嬉しい」  ガルの腰がガツンとぶつかった。狭い場所の先に硬い先端がグポッと入り込む。その瞬間、僕は盛大に体を震わせていた。ぐぽぐぽと狭い場所を何度も擦られて頭の奥がチカチカし始める。あまりの快感に恐怖を覚えた僕は、ガルの肩をますます強く噛んだ。 「ん~~……っ!」  口の中に鉄臭い味が広がる。同時に僕の体の奥を新しい種が濡らし始めた。まるでどっちも僕が食べているみたいだ、なんておかしなことを思った。 (食べてしまいたいくらい、ガルが好き)  まだ少しだけ痛みが残る左手を伸ばし、両手でぎゅうっとガルを抱きしめた。
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