幸福

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幸福

 夜。  哲也くんから訪問窺いの連絡が入った。今回の事件はテレビでもすぐに報道され、事件を知った上司から一週間程休んでいいと言われている。だからいつでもいいよと伝えた。  翌日の昼間。  非番だという哲也くんが部屋にやって来た。非番なのにまた玄関先で、哲也くんから告白された。もちろん、答えはイエス。  恋人になってからの初デート。昼食を食べに行った定食屋のテレビで、犯人の動機が明かされていた。 曰く、「窃盗犯を現行犯逮捕しても、被害者はガキ臭い元同僚にしか注目しない」ということらしい。年輩になっても承認欲求を満たすことしか考えていない犯人のことなんてどうでもいい。  他にも余罪があって麻薬も、なんて音が聞えている。だけど、もう思い出すこともないと思う。 「哲也くん、これからもよろしくね」 「こちらこそ。よろしく、皐月さん」  何度も呼ばれたことがあるのに、甘い響きに聞こえる。近所の少年が恋人になった。思わず、運命のような繋がりを感じる。  見つめ合っていたら、頼んでいた料理が運ばれてきた。 「哲也くんのカツも美味しそう。私の天ぷらも一つあげるから、一切れちょうだい?」 「喜んで」  分け合うおかず。  ――あぁ、幸せだな。 ( 完 )
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