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翌朝、僕の熱は37.5度の微熱だった。
相変わらず喉は痛かったけど、しゃべらなければ少しはましだ。
「ごめんねユタ、なるべく早く帰ってくるから…卵粥、テーブルにあるから食べてね…」
ママはそう言って、まだ片方しか靴下が履けていないコタを抱きかかえて家を出た。
僕はお兄ちゃんだから、辛くても泣かない。
留守番だってできる。
大丈夫なんだ。
僕がゴロリと寝返りをうつと、パパと目が合った。
「ユタ、大丈夫か?」そうパパの声が聞こえた気がした。
変わらない笑顔のパパが僕を見つめる。
「コタはまだ幼い、だからお前がパパの代わりにママを助けてやってくれな…」
僕はあの日、パパのやせ細った小指と指切りをした。
「こんなこと頼むことになってゴメンな…」
そう言い残したパパとお別れをしてからもうすぐ二年になる。
僕はちっとも約束を守れていない。
ママをガミガミさせてしまってるし、コタにもちっとも優しくできていない。
ごめんねパパ、でも、なんで僕たちを置いて死んじゃったのさ…
写真のパパは、相変わらず優しく笑って僕を見つめ返すだけだった。
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