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ママもコタももう行ったから、ねぇ、パパ、泣いてもいいよね?
頭も喉も痛いんだ。
体は鉛みたいに重たいし。
辛いよ…寂しいよ…心細いよ…
本当は仕事行って欲しくなかった…
行って欲しくなかったよ…
僕は布団にくるまって、パパから見えないように隠れて泣いた。
メソメソと、長いこと泣き止むことができなかった。
ーーーガチャガチャ
しんと静まり返った部屋に、玄関のドアノブの音が響いた。
え?何?
僕の心臓がバクバクと、胸から飛び出そうなくらい激しくなる。
まさか、空き巣?
嘘…どうしよう…
怖い…
布団から出るのも、潜っているのも怖くて、僕はそのまま動けずただ震えることしかできなかった。
ーーーギギィ
ドアの開く音の後に、コツコツとヒールの音と、ガサガサとビニール袋の馴染みのある音が聞こえた。
え?…ママ?
僕は慌てて涙を拭った。
「ユタ、どう?大丈夫?」
ママが買い物袋と家の鍵をジャラジャラっと、テーブルに置いた音がした。そして、僕の様子を見に近づいてくる。
「ユタ?」と、布団の上から僕にポンと手を置いた。
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