2章

2/24
前へ
/101ページ
次へ
  ――――穢れたなんて話じゃない。 ――――あんな男に好き勝手されてたなんて……。――絶対一臣には絶対知られたくない。 「だからって、別れる事は……。僕が知る近衛一臣って人は事実を知っても受け入れてくれるくらい器の大きな男だった筈だし」  熱く語る将隆。麗奈はその勢いに体をびくっとさせてたじろぐ。 「あっ、ごめん。びっくりさせてしまったね。熱くなりすぎたようだ。済まない」  それを見て将隆は落ち着きを取り戻すと、一息つき麗奈に謝り話を続ける。 「だけど、本当にお似合いだったから勿体無いと思ってね」  将隆はそう言葉を掛けると、珈琲を口に運び喉を潤す。その間、麗奈は何か考えた様子で珈琲を口に運び潤しながら、暫し沈黙した後言葉を続ける。 「本当にいろいろとありがとう。田口の件も上手く処理してくれて感謝してる。でも、一臣にはやっぱり穢されたなんて言えないな。穢れた女と思われるくらいなら嫌われた方がましだわ」  麗奈はそう言うと視線をはるか遠くにある何かに置き、悲しげな表情を浮かべる。麗奈にそう言われては簡単に話を続ける訳にはいかず自ずと沈黙が訪れ、それを紛らわせるように二人は珈琲を再び口に運び喉を潤していた。 「確かに麗奈のいう事は解るよ。けど、やっぱりもったいないと思う」  テーブルに肘を着き左手の拳を右手で包むようにしてそれを顎に当てながら話す将隆。 「将にいのいう事もわかる。わかるよ。私もまだ一臣の事、愛してるし……」  麗奈は云々と頷き言葉を返す。 「それなら、なおの事別れちゃ駄目だと思う。今ならまだやり直せる」  将隆は諭すようにゆっくりと優しい口調で話を続ける。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加