2章

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 七瀬が怒っているの気付いた将隆が慌てて言葉を返す。 ――――やばいな、七瀬は頭に血が上るとまったく話にならないからな。 ――――話になればいいが……。 「この女性は幼馴染の一ノ瀬麗奈さんだよ。七瀬が考えているような事は無いから信じて欲しい」 「ここで会ってるっていうのに何を信じればいいのぉ」 ――――やっぱり、話にならないか。 「冷静になって聞いてほしい」 「なによぉ。ここで会うって事はそういう事でしょお。将隆のばかぁ」  七瀬は泣きながらそう言葉を残して駆けながら去って行ってしまった。それを将隆がやれやれといった顔をして見送る。それを見て麗奈が気まずそうにしていた。それに気付いた将隆が済まなそうな表情を見せ言葉を掛ける。 「見苦しい所見せて済まない」 「んーんっ。私のせいで誤解されたみたいで。こちらの方こそごめんなさい」 「大丈夫だから気にしないで」  声を上ずらせて話す将隆をみて麗奈は言葉を失っていた。それに気付いた将隆は話を続ける。 「本当、大丈夫だから気にしないでね」  内心は動揺していたが、麗奈を安心させようときわめて冷静に笑みを浮べ言葉を返す。それを受け麗奈は納得してなかっただろうが、これ以上深入りすることはせず「今日はありがとう。それじゃまたね」と言葉を残してその場から去って行った。それを見送る将隆。まるでこの期を暗示しているかのように、月を雲が覆い隠し辺りに闇が訪れていた。
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