2章

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  俺はそう言いながら良く無い話しなのは理解していたから、本音を言えば行きたくなかったのだ。が、逃げる訳にもいかず、行くしか選択肢が無かった。   この後は将隆が戻らなかった事以外は特別な事も無く、作業を終えるメロディーが鳴る。と、同時に田宮が3課を後にしていた。まだ作業している七瀬に一臣が話し掛ける。 「僕はお先に失礼します。では後程」 「お疲れ様ですぅ。じゃあぁ、後でぇ」  俺は憂鬱さを隠し、七瀬にそう言葉を掛けると3課を後にし、喫茶店プランタンに向け車を走らせていた。程無くしてプタンタンに辿り着くと、駐車場に車を停めなか店へ向かう。カランカランとドアベルを鳴らし中に入ると奥のバックヤードからマスターの長谷川さんが顔を覗かせ駆け寄り声を掛けた。マスターの長谷川さんは30代でこの店を開店させたやり手で一目置いていた人物だった。 「お久振りね。元気してた。最近見ないから心配してたのよ」 「どうもお久し振りです。ちょっといろいろありまして」 「そうだったんだ。今日はゆっくりして行ってね」  マスターの長谷川さんはそう言葉を残し奥のバックヤードに消えていった。  何時もの様に奥に進み一番奥の4人掛けの席に腰を下ろす。そして、何時もの様に珈琲のキリマンジャロを頼み、ショパンの調べを聞いていた。これからを思うと憂鬱ではあるが何故かリラックス出来ていた。  僕は近衛さんを見送りなんと謝れば良いのか。それを考えていた。 ――――なぜ、キスしちゃったんだろう。 ――――と、言うか何処か似てるのよね。あの2人……。 ――――ちがう、ちがう今かんがえなきゃならないのはどう謝るかだったわ
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