3章

3/16

119人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
「仙台に出張した時の懇親会で睡眠導入剤をお酒に混ぜられてそれで……」  私は話したくなかったけど、話すことが一臣への誠意だと思い答えていた。その麗奈の話を遮る様に言葉を掛ける一臣。 「そうだったのか。嫌な事思い出させて済まない」  そうは言ったものの、それは麗奈への気遣いでは無く、その時の麗奈の様子はどうだったんだろうかと考えると、もう聞きたくないというのが本音だったし、想像すると吐き気がしていた。 「こっちこそごめんね。嫌な思いさせて……」  私はそう言いながら、一臣が嫌な思いをいて苦しんでいるかと思うと、切なくて言葉を詰まらせていた。  気まずい雰囲気になり暫し沈黙する。奥からはジャズの調べが聞こえていた。その沈黙を破り一臣が話し掛ける。 「将隆さんから聞いたんだがやり直したいと思っているのは本当なのか」 ――――麗奈はどう思っているんだろうか。 ――――やり直したいのは嘘なのではないだろうか。  俺は脳裏に不安を走らせていた。 「今でも一臣を愛してるから、叶うならやり直したい」 ――――本当に愛してる。けど……。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加