3章

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「本当だよ」  一臣が七瀬を見て答える。 「それなら良いんですがぁ、さっきから近衛さん眉間に皺をよせて怖い顔してたから上手く行かなかったのかと思いましたよぉ」  七瀬はそう言うと首を右に傾げ一臣を見つめる。この時、一臣は七瀬にすべて見透かされているようでドキッとしていた。 「そんなに怖い顔してました」  一臣が平静を装い七瀬に訊ねる。 「はぁいっ。すっごく怖い顔してましたよぉ」 ――――近衛さん、多分何か悩みあるんだろうな。 ――――僕が力になれればいいんだけど。 「そうですか。はあ。……」  一臣はそこまで言うとため息をつき沈黙すると、眉間に皺を寄せた。それに気付いた七瀬が声を掛ける。 「近衛さん大丈夫ですかぁ。何か悩みですかぁ」 「悩みというか。――あ、いや大丈夫です」 「でもぉ、大丈夫な人の顔じゃないですよぉ」 「本当に大丈夫ですよ」 「嘘ですぅ。僕で良かったら相談乗りますよぉ。話せば楽になる事もあると思うんですよぉ」 「――やっぱり、隠せませんね。――けど、ここで話せる話じゃないんで」
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