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「そういう事。前向きに考えよう。それに駄目なら……」
「駄目ならって、何」
麗奈が右に首を傾げ訊ねる。
「あっ、いや。何でもない」
――――僕は今なんて事を言おうとしたんだ。七瀬がいるのに。
――――この気持ちはとっくの昔に封印したはずなのに……。
「変な将にい」
――――確かにそうだ。調子が狂ってる。
――――それに近衛さんには借りを返さなきゃならないのに……。
将隆はそんな事を考えながら言葉を返す。
「そうかな」
その表情は何処か愁いをふくんでいた。
「そうだよ。何時もなら歯切れが良いのに歯切れが悪いなんて珍しいね」
悪戯気な笑みを浮べる麗奈。
「そういう事もあるさ」
将隆は作り笑いを浮べそう言葉を返す。この時、将隆は困惑していた。消したはずの気持ちがまだ心の片隅に根付いていたという事実は、認めたくは無かったし認める訳にはいかなかった。その中で、将隆は麗奈を思い言葉を続ける。
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