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5章
あれから一月が経ち季節は巡り秋になっていた。その間、一臣と麗奈は何回か逢ってはいたが関係は変わらず、適当にドライブしてはプランタンに行くを繰り返していた。一臣も何処か割り切れない様子でいま一歩踏み込めないでいたし、麗奈もまた気にするあまり踏み込めずにいた。そんな感じでこの日も2人はいつも通り逢っていた。
一臣が麗奈のマンションの前に車を止め麗奈を待っていると麗奈がやってきて車に乗り込み声を掛ける。
「遅くなってごめん。待ったでしょ」
「いや、それ程でもないよ。いつもに比べたら早い方かな」
一臣は麗奈を見てそう言いうと優しく微笑む。
「それならいいんだけど、何時もごめんね」
そう言いながら一臣を見て笑みを浮かべる麗奈。
「いや、本当に大丈夫だから。それよりこれから山の方にドライブして湖畔公園に行こうかと思うんだけどどうかな」
「湖畔公園に行くの久しぶりね。うん。行きたい」
「それじゃ、決まりだね。湖畔公園に行こう」
一臣はそう言うとスタートボタンを押しエンジンをかけ車を走らせ始める。それを麗奈が眺める。麗奈のそれに気づいたのか一臣が訊ねる。
「んっ、どうした」
「んーんっ、何でも無い」
――――今日は頑張らなきゃ。
――――このままじゃいけない。
麗奈はそんな事を考えながら答える。
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