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麗奈はそう言うと声を出して笑い、一臣もつられて笑う。
そうこうふたりが車内で話しているうちに目的に湖畔公園に辿り着き、一臣は駐車場に車を停め麗奈に話し掛ける。
「湖畔公園についたけどどうする。先に売店に行く。それとも先に湖の周りを歩くか」
「んー、じゃあ。先に湖の周りを歩かない。売店は後で寄ろうよ」
「そうか。じゃ、湖畔の周りを歩くか」
「うん歩こう」
2人は車を降りると湖の方に並んで遊歩道に向け歩み始める。その2人を秋風が通り過ぎる。
「心地いい風ね」
そういう麗奈の長い髪が風に舞いフラグランスの香りが漂い一臣の鼻を擽る。
「ああ、心地よい風だ」
秋の心地よい風を受け一臣は深呼吸して答える。
「本当だね」
麗奈はそう言いながら一臣を見詰める。それに気付いた一臣が訊ねる。
「麗奈。どうした。俺の顔に何か付いてる」
「んーん。ついてないよ。ただ、幸せだなっ思ってね」
俺は麗奈の幸せって言葉にハッとしていた。確かに婚約破棄されたあの時と比べたら幸せだろう。だが、素直にそう思えない自分がいた。何処か踏み込めないでいる自分を歯がゆく思う。解ってる。解っているが割り切れないのだ。なんて器量のない男なのだと思う。このままじゃいけない。そう思うのだが……。
「俺も幸せだって思っていた」
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