5章

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 俺は愛想笑いを浮かべながらそう嘘をついていた。見え透いた嘘を……。 「ほんとに。それなら嬉しいな」  私はそう答えながら、一臣の優しい嘘に気付いていているのに気付かぬ振りをしていた。一臣は多分悩んでるんだと思う。本当なら別れて一臣を解き放った方が良いんだろうけど、私は一臣を切ないほど愛しているからそれが出来ずにいた。一緒にいれるならなんだってできる。たとえ……。 「ほんとだよ」  一臣がそう答えると麗奈は一臣の左手を握る。一臣はそれを握り返した。 「なんかいいね。こういうのも」 「ああ、たまには悪くないだろ」 「ここに来るのも久し振りだもんね」 「あれ、そうだっけ。去年来てなかったっけ」 「去年じゃないよ。おととしだよ。他の誰かと勘違いしてるんじゃないの」 「おいおい、他の誰かって誰よ。麗奈しかいないだろ」 ――――本当に幸せだな。 ――――この幸せを逃さない為には……。 「ふふふ、そうだね。ちょっとからかってみただけ」  私は答えながら覚悟を決めていた。
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