6章

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「ふう」  深くため息をつく一臣。そして言葉を続ける。 「実はいい感じになったんですが、その営みをしようと思ったら一瞬拒絶されましてね。それは良いんです。問題はそれに気付いた時ホッとした自分がいたんです」 そう。心底ほっとしていた。俺は心の奥底では麗奈を拒絶していた。それを誤魔化していたにすぎない。こうなるのは解っていた筈なのに……。 「一臣さん自体も麗奈さんを拒絶していたという事ですかぁ」  確認するように訊ねる七瀬。 「そうなりますね。けど、麗奈の事は愛してる。――愛してはいるんですが……。どうしても駄目なんです」  そう言いながら一臣は表情を曇らす。 「それってあの事も関係していますかぁ」 「はい。関係していると思います」 「それは難しい問題ですよねぇ。簡単に割り切れる問題では無いですしぃ」  可哀そうな一臣さん。麗奈さんに拒絶された事と麗奈さんを拒絶してしまった事の二つの事でこんなにも苦しんでる。僕に出来る事があるならなんだってしてあげたいけど、僕には何もしてあげれないのがもどかしい。 「何ともならないのは自分でもわかってはいるんですけど」 「そういう事もありますよぉ。誰だって簡単に割り切れる話では無いですからぁ」
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