栄光の夜

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 それからすぐに真昼は車を手配してくれて、三日後にはアンナ園への訪問が実現した。  園までは車で一時間ほど。  雪がちらついていたけれど、幸いにも積雪には至らなかった。  ふわりと風に舞う雪が車窓に映るのを、ぼんやりと眺める。  真昼の運転で遠くに出かけるのは新鮮で、不思議な感覚だった。    ラジオから流れるジャズを聴きながら、日に日に傷が癒えていることを漠然と思った。  もう航平の夢もほとんど見なていない。  あんなに愛していたのに。  あんなにかけがえのない存在だったのに。  雨が雪に変わるように移ろっていく心に落胆して、情けなく思う気持ちと、そんな浅はかさに安堵している自分もいる。  このまま雪が溶け、温かな陽光に照らされる季節には、きっと心から笑える日が来るはずだ。  もう二度と会えなくても、いつまでも航平の幸せを願う気持ちは変わらない。 「紗莉、この曲知ってる?」  まるで子供の遠足のように、真昼が笑う。  私がどこまでも穏やかで優しい気持ちになれるのも、全部彼のおかげだ。 「知らない」 「マジで? ちょっとくらいジャズも嗜みなよ。まあ俺も知らないけど」 「知らないんじゃん」  春になったらきっと、自分の足で立ち、自分の表情(かお)で笑える。  そして、真昼の歌を歌うんだ。  その為にも、彼のことをもっと知りたい。  ラジオに合わせてめちゃくちゃな鼻歌を歌う真昼がおかしくて、口元を小さく緩めた。
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