1、夫と親友に殺された日

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「そんな……あたくしは当たり前のことをしたまで。今までリエルを支えてきたつもりでしたけど、彼女の悪事を見抜けなかったあたくしの責任でもありますわ」 「ノエラ、君こそが王太子妃にふさわしい」  お互いに見つめ合うアランとノエラ。  これまでリエルは想像もしていなかった。  自分の夫と親友が、深い仲であったことを。 (これは何の茶番? 私が一体何をしたというの?)  リエルはふたりに何も発言することもできず、そのまま意識が薄れていく。  目の前の光景が歪んでいき、やがて真っ白の世界が広がった。  何もなかった。  先ほどまでの痛みも感じなかった。  不快な思いも薄れていく。  これが死というものなのかと、リエルは不思議な感覚に囚われていた。 「リエル、リエル……」  遠くでよく知った女性の声がした。  なつかしくて、その声を聞くだけで涙が出そうになる。 「お母さま?」  リエルが10歳のときには母は病気で亡くなった。  母との思い出は数少ない。  母は絵本を読んでくれたり、一緒に庭を散歩したり、眠れないときは一緒に寝てくれた。  わずかな思い出。だからこそ、あまりに貴重でリエルの記憶には深く刻まれてる。  母が亡くなった日、リエルは彼女のベッドで大泣きした。 (迎えに来てくれたのね)
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