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侯爵家はざわついていた。
なぜなら今まで父の命令に従っていたリエルが突如反抗的な態度を見せたからだ。
使用人たちはリエルの噂をしてまわった。
「お嬢さまが縁談を断ったんですって?」
「結局嫁いでしまわれるらしいけど」
「でも変なのよ。お嬢さまがまるで別人のようなの」
ひそひそ話していた使用人たちの横を、リエルは黙って通り過ぎる。
使用人たちは慌ててリエルから顔を背けて、廊下の掃除を再開した。
リエルは使用人たちを横目で見つめながら胸中でぼそりと呟く。
(そう見えるでしょうね。だって、私は昨日までの私じゃないもの)
廊下の窓から外に目をやると晴れやかな空が広がっている。
リエルはふと、殺された瞬間に夢に出てきた母のことを思い出した。
(なぜかはわからないけれど、どうやら私は1年前に戻ったようね)
雲一つない空に白い鳥たちがすうーっと舞い上がった。
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