2、気づいたら1年前だった

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 リエルは鏡台(ドレッサー)の前に座り、自分の姿を見つめる。  くすんだ茶髪に(あお)()。地味な顔立ちだが、それでも生きていることをあらためて実感する。  いつも通りの自分の顔だ。  そして、鏡越しに背後にいる使用人を見つめた。  まだ若い新人のようで少し緊張しているのか、おずおずとリエルの様子をうかがっている。 「あなた、名前は?」 「エマでございます」  声をかけるとエマは慌てて返答した。  リエルはなるべく優しく話をする。 「エマ、出かけるから支度を手伝ってちょうだい」 「かしこまりました」  エマは新人だが手慣れているのかリエルの髪を丁寧に()き、化粧をしっかり施した。  そして、リエルは地味な色のドレスを着る。  せっかく戻ったのに、縁談を回避することができなかった。  それなら、何としてもアランに婚約破棄してもらうしかない。  同じことを繰り返して殺されるなどごめんだ。 (あと、ノエラの本性はしっかり暴いてやるわ)  リエルは固く決意した。
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