2、気づいたら1年前だった

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 頭からすっぽりフードを被った人物が、男の腕をがっちりと掴んでいた。 「は? な、何だ貴様?」  狼狽える男に向かってフードを被った人物は淡々と返答する。 「女性に手を上げるのはいただけないなあ」 「貴様っ……!」  だが次の瞬間、歯向かおうとした男はその人物に腕を捻り上げられ、床に叩き伏せられた。  あまりにも素早い動きにリエルもエマも呆然としている。 「す、すまん! 悪かった! 許して!」  男が許しを請うとフードの人物は呆れ声を出した。 「俺に言うなよ。そちらのお嬢さんに謝れ」 「悪かった。もうしない!」  男がリエルを見て謝罪をすると、フードの人物は男を解放し、軽い口調で命令した。 「じゃ、目障りだから出ていって」 「く、くそっ……!」  男は逃げるように店を飛び出す。  フードの人物が目配せすると、周囲にいた数人が男を追いかけていった。 「お嬢さま、よかったですう!」  泣きそうな顔で抱きついてきたエマを、リエルは優しく受けとめる。  同時に、視線の向こうに立つ人物をじっと見つめた。  フードで隠しているが、わずかに見える金髪と翠眼(すいがん)は高貴な印象を(いだ)かせる。  只者ではないだろう。
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