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頭からすっぽりフードを被った人物が、男の腕をがっちりと掴んでいた。
「は? な、何だ貴様?」
狼狽える男に向かってフードを被った人物は淡々と返答する。
「女性に手を上げるのはいただけないなあ」
「貴様っ……!」
だが次の瞬間、歯向かおうとした男はその人物に腕を捻り上げられ、床に叩き伏せられた。
あまりにも素早い動きにリエルもエマも呆然としている。
「す、すまん! 悪かった! 許して!」
男が許しを請うとフードの人物は呆れ声を出した。
「俺に言うなよ。そちらのお嬢さんに謝れ」
「悪かった。もうしない!」
男がリエルを見て謝罪をすると、フードの人物は男を解放し、軽い口調で命令した。
「じゃ、目障りだから出ていって」
「く、くそっ……!」
男は逃げるように店を飛び出す。
フードの人物が目配せすると、周囲にいた数人が男を追いかけていった。
「お嬢さま、よかったですう!」
泣きそうな顔で抱きついてきたエマを、リエルは優しく受けとめる。
同時に、視線の向こうに立つ人物をじっと見つめた。
フードで隠しているが、わずかに見える金髪と翠眼は高貴な印象を抱かせる。
只者ではないだろう。
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