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フードの人物はリエルの視線に気づいたのか、にっこりと微笑んだ。
「君、動じないんだね。普通は怖がるものだけど」
男の声だが口調は穏やかだ。
よく見るとその顔もかなり美しい。
いわゆる美青年である。
エマが目をキラキラさせるも、リエルはまったく動じることなく冷めた口調で返答した。
「あの男が私を殴ればさすがに大騒ぎになるでしょ?」
「へえ、面白い。なかなか肝が据わっているな」
「助けてくれてありがとう。じゃあ、これで」
リエルがくるりと背を向けると、彼が近づいてひっそり声をかけてきた。
「そんな格好をしてもわかるよ。君は貴族の令嬢だ。本来こんなところにいる人間じゃない」
くるりと振り返ったリエルは男を睨むように見る。
「あなたもそうでしょ。高貴なオーラは隠せないわよ」
「一緒に食事でもどう?」
リエルは眉をひそめる。
「結構よ。あなたこそ、先ほどの男に説教できないわね。名乗りもせず女を食事に誘うなんて」
「失礼。グレンだ」
「家門は?」
「それは勘弁してくれ」
「話にならないわ」
男が女をデートに誘うにはまず名前と家門を名乗るのは常識だ。
リエルは呆れ顔で男から離れた。
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