2、気づいたら1年前だった

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 フードの人物はリエルの視線に気づいたのか、にっこりと微笑んだ。 「君、動じないんだね。普通は怖がるものだけど」  男の声だが口調は穏やかだ。  よく見るとその顔もかなり美しい。  いわゆる美青年(イケメン)である。  エマが目をキラキラさせるも、リエルはまったく動じることなく冷めた口調で返答した。 「あの男が私を殴ればさすがに大騒ぎになるでしょ?」 「へえ、面白い。なかなか肝が据わっているな」 「助けてくれてありがとう。じゃあ、これで」  リエルがくるりと背を向けると、彼が近づいてひっそり声をかけてきた。 「そんな格好をしてもわかるよ。君は貴族の令嬢だ。本来こんなところにいる人間じゃない」  くるりと振り返ったリエルは男を睨むように見る。 「あなたもそうでしょ。高貴なオーラは隠せないわよ」 「一緒に食事でもどう?」  リエルは眉をひそめる。 「結構よ。あなたこそ、先ほどの男に説教できないわね。名乗りもせず女を食事に誘うなんて」 「失礼。グレンだ」 「家門は?」 「それは勘弁してくれ」 「話にならないわ」  男が女をデートに誘うにはまず名前と家門を名乗るのは常識だ。  リエルは呆れ顔で男から離れた。
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