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リエルとエマはカウンターテーブルに座る。
その向こうはキッチンへ続いていて、少しばかり店側から見えている。
そこには大鍋でスープを作る料理人が見えた。
一方、リエルから少し離れた席にグレンが座った。
リエルが料理人をじっと見ている横で、エマがそわそわしている。
「あの男の人、ずっとこっちを見てますよ」
「無視すればいいわ」
エマがちらりと目を向けるとグレンがにっこり笑った。
「か、かっこいい」
ときめくエマをよそに、リエルはずっとキッチンの様子をうかがっている。
そこへ料理人がひょっこり店に出てきて、ひとりの客から粉末の入った袋を受けとった。
(なるほど、麻薬入りスープね。それなら繁盛するはずよ)
リエルは立ち上がり、カウンターテーブルにある酒の入った自身のコップを手に持った。
そして転びそうになったふりをして、思いきり料理人に向かって酒をぶっかけた。
料理人は驚き、粉末の袋を床に落としてぶちまけてしまう。
リエルはわざとらしく声を上げて、店内の客たちに聞こえるように言った。
「まあっ、大変だわ! ごめんなさい。手が滑ってしまったの!」
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