2、気づいたら1年前だった

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 リエルとエマはカウンターテーブルに座る。  その向こうはキッチンへ続いていて、少しばかり店側から見えている。  そこには大鍋でスープを作る料理人が見えた。  一方、リエルから少し離れた席にグレンが座った。  リエルが料理人をじっと見ている横で、エマがそわそわしている。 「あの男の人、ずっとこっちを見てますよ」 「無視すればいいわ」  エマがちらりと目を向けるとグレンがにっこり笑った。 「か、かっこいい」  ときめくエマをよそに、リエルはずっとキッチンの様子をうかがっている。  そこへ料理人がひょっこり店に出てきて、ひとりの客から粉末の入った袋を受けとった。 (なるほど、麻薬入りスープね。それなら繁盛するはずよ)  リエルは立ち上がり、カウンターテーブルにある酒の入った自身のコップを手に持った。  そして転びそうになったふりをして、思いきり料理人に向かって酒をぶっかけた。  料理人は驚き、粉末の袋を床に落としてぶちまけてしまう。  リエルはわざとらしく声を上げて、店内の客たちに聞こえるように言った。 「まあっ、大変だわ! ごめんなさい。手が滑ってしまったの!」
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